「笑声」(エゴエ)が電話応対の基本 “気働き”コミュニケーション術・電話編①

「エゴエ」の誕生

 20数年前、大手運輸企業の「電話応対」研修で全国のコールセンターを回ったことがあります。九州のある都市でのこと。一人の女性が電話を受ける際に、素晴らしく「良い声」を出しているのに気づきました。
 見るとその女性、とても表情が良い――。常に明るく、爽やかな微笑みをたたえています。すると、その表情に導かれるようにして、自然に弾んだ良い声になるのです。

「笑顔」+「声」=「笑声」(エゴエ)

 豊かな表情が生み出す明るく爽やかな声を、それ以来私は「笑声」(=エゴエ)と呼ぶようにしています。
では、「エゴエ」での電話応対と、そうではない電話応対、果たしてどれくらいの違いがあるのでしょうか? 結論からいえば、
「まったく違います!」
具体的な数字でお示しできないのが“くやしい”くらい、相手に与える印象が異なるのです。

「エゴエ」と正反対の例と言えば、皆さん「役所」を思い浮かべられるかもしれません。最近はだいぶ少なくなったようですが、忙しい時間に電話をしようものなら、
「はぁい。○○課」
 と、無愛想な返事が戻ってくることがよくありました。電話に限らず役所の応対については、
・無愛想。
・事務的。
・敬語を使ったら使ったで、今度は“慇懃無礼”に聞こえる。
 など、あまり評判が良くありませんね。ここで皆さんには、役所の職員が「はぁい。○○課」と答えているときの「表情」を想像してみてほしいのです。
いかがでしょう?
「面倒くさそう」「暗い顔」「片手間で電話を受けている」……。こんな場面、表情が浮かんだのではないでしょうか。
 このような応対を改善していくためには、実は声ではなく「表情を変える」のが最も効果的です。自然に「エゴエ」が出るような、豊かな表情に変えていくのです。

表情と声はつながっている!

 表情が豊かであれば、エゴエが出てくる。エゴエが出ているときは、例外なく表情が豊か――。表情と声は、密接に“つながって”います。
 あなたもぜひ、実験で確かめてみてください。まずは次の2つの表情をつくってみます。
1.口角を軽く上げ、微笑みを浮かべる。
2.最近、腹が立ったことを思い出し、怒りの表情になる。
 次に、それぞれの表情をキープしたまま、電話応対に必ず登場する定番フレーズを発声してみます。
「お電話ありがとうございます。○○会社、○○でございます」
 いかがでしたか?

「1」では、ごく自然に、普段の声よりもやや高めで、明るい、張りのある声が出たのではないでしょうか。それが、あなたの「エゴエ」です。
いっぽう「2」の表情のときは、いかがでしたか。「怒りの表情」では、特に「ありがとうございます」が言いづらかったのではないでしょうか。それくらい、表情と声は「連動」しているのです。

 電話応対の際に、相手に好印象が残るような「良い声」を出そうと思ったら、自分の「表情」を意識すること。これが、とても大切だと思っています。ニコニコ顔をして、おかしくて笑っているような甲高い声を出す――ではありません。豊かな表情が、自然にあなたの「エゴエ」を導き出してくれるのです。