電話でも“決めるのは相手”が原則 “気働き”コミュニケーション術・電話編⑤

便利な「ながら復唱」で相手の負担を減らそう

 電話を受けているとき、必要なことのひとつに「復唱」があります。相手の名前や電話番号、住所などを伺った際、聞き間違いがないように確認する“おなじみ”のプロセスですね。
 ここで、あなたに質問です。
「あなたは電話で“復唱”する際に、相手の負担を考えていますか?」
 負担とは、ズバリ手間と時間。これからご紹介する「ながら復唱」を実践すると、相手にかかる負担を確実に減らすことができます。

「ながら復唱」とは、「耳で聞きながら、口で話しながら、手を動かす」という3つのことを同時に行う復唱の方法――。
 食事しながらスマホに夢中になることはマナー違反ですが、仕事の場面ではこの3つを同時に進めていかないと、相手にとってはストレス、不利益、不満足につながってしまうのです。
 具体的には、このように進めます。お客様にご住所を伺っている場面(一部)です。

お客様「北区赤羽」
担当者「きたくあかばね」
お客様「1丁目」
担当者「いっちょうめ」
お客様「3の」
担当者「さんの」……。

このように言葉の切れ目で細かく復唱していきます。お客様も「これで住所を確認してくれている」と分かるので、電話の最後に「では、もう一度復唱させていただきます。ご住所は~」と確認する必要がなくなり、時間の短縮にもつながるのです。
特に相手の「声の表情」から「忙しい」というアピールを感じたら、この方法で確認を進め、極力時間を短縮しましょう。

すべて「相手の決定」を尊重する姿勢で

 相手の忙しさに「声の表情」で気づいたら「ながら復唱」が親切で合理的。だからといって、最後に「復唱」すること自体が間違いではありません。ただし、この場合には尊重すべきルールがあります。それは「決めるのは相手」という原則です。
 相手の状況にかかわらず、こちらが「復唱」したいからといって、
「では、復唱いたします」は、誤り。
「もう一度、復唱させていただいて、よろしいですか?」と、相手の許可を得てから実行する――と、覚えておきましょう。

 この原則は、次のような場面にも同じように適用されます。
たとえば問い合わせの電話を受け、相手を長く待たせてしまいそうな場合、

×「少しお待ちくださいませ」
○「お時間少々いただくようになってしまいます。いかがいたしましょうか」

こちらから「待ってください」と言うのではなく、「いかがいたしましょうか」と相手に判断を委ねます。
 同じく、相手の名前が聞き取れなかった場合も、

×「もう一度、お名前をお願いいたします」
○「恐れ入ります。もう一度、お名前をお願いできますでしょうか」

 同じくこちらから「お願いします」ではなく、「お願いできますでしょうか」が、相手に判断を委ねる正しい問いかけ方です。