日本語を“細やか”に使い分けよう - “気働き”コミュニケーション術⑦

「いかがなさいますか?」vs「いかがいたしましょうか?」

私たちが普段使っている日本語は、あなたが想像する以上に「細やかな表現の工夫」ができる言葉。
常に相手の自尊心を大切にする言い方を心がければ、仕事でもプライベートでも、より良い人間関係づくりにつながります。

たとえば、こんな場面を思い浮かべてください。
週末は予約のできない人気レストラン。開店直後に出向いたものの、残念ながらすでに満席……。店員さんが笑顔でこう尋ねます。

「申し訳ございませんが、1時間ほどお待ちいただくことになります。いかがなさいますか?」

とても丁寧な応対ですね。
「申し訳ございません」と、クッション言葉(=強い内容を伝える際、相手に与える衝撃を和らげるフレーズ)もよい印象です。
笑顔でこう聞かれれば、「1時間なら、待ちましょうか」ということになりそうです。

では、こちらの言い方はどうでしょう?

「申し訳ございませんが、1時間ほどお待ちいただくことになります。いかがいたしましょうか?」

負けず劣らず丁寧です。先ほどの応対例との違い、どこにあるかお気づきですね。後半部分が微妙に異なっています。

1.「~いかがなさいますか?」
2.「いかがいたしましょうか?」

少し理屈っぽい話になってしまうのですが、「1」は「あなた」が主語。元の形は「あなた(=お客様)は、いかがなさいますか?」。
そこから主語が省かれた形です。
いっぽう「2」は「私」が主語。同じく元の形は「私(=店員)は、いかがいたしましょうか?」。同じように主語は省かれています。

より柔らかい印象を相手に届ける方法

主語が「あなた」なのか「私」なのか――。
言い換えれば、相手に何かを“してもらう”のか、あるいは自ら何かを“する”のか、ですね。

それぞれ、
「あなたは、どうしますか?」
「私は、どうしましょうか?」
――の丁寧な表現、というわけです。

このようなケースでは、「あなたは、どうしますか?」と、問いかけるよりも、
「私は、どうしましょうか?」という表現のほうが、
相手にとっては“柔らかい印象”に聞こえます。

特に電話やメールなどフェース to フェース以外のやり取りの場合は、
「私」を主語にした「いかがいたしましょうか?」~すなわち
「私は、あなたのために、何をしたらよろしいのですか?」という言い方のほうが、
より丁寧で謙虚な表現として相手に届くのです。

どちらかと言えば“奥ゆかしい”日本人としては、
「あなたは、どうしますか?」→「私は、こうします」という言い方よりも、
「私は、どうしましょうか?」→「では、○○してくださいますか?」という言い方のほうが、口からスッと出やすいのです。
あまり心のこもっていない言い方で「いかがなさいます?」と聞かれると、
つい「私は○○しますから結構です」と続けてしまいたくなりそうですね。

こうした「わずかな違い」に気を配れるか否か――。
日本語の難しいところでもあるのですが、同時に「素晴らしいところ」といえると、私は思っています。