日本語を“細やか”に使い分けよう – “気働き”コミュニケーション術⑦

2016-04-03
社長のコラム

「いかがなさいますか?」vs「いかがいたしましょうか?」

 私たちが普段使っている日本語は、あなたが想像する以上に「細やかな表現の工夫」ができる言葉。常に相手の自尊心を大切にする言い方を心がければ、仕事でもプライベートでも、より良い人間関係づくりにつながります。
 たとえば、こんな場面を思い浮かべてください。
 週末は予約のできない人気レストラン。開店直後に出向いたものの、残念ながらすでに満席……。店員さんが笑顔でこう尋ねます。

「申し訳ございませんが、1時間ほどお待ちいただくことになります。いかがなさいますか?」

 とても丁寧な応対ですね。「申し訳ございません」と、クッション言葉(=強い内容を伝える際、相手に与える衝撃を和らげるフレーズ)もよい印象です。笑顔でこう聞かれれば、「1時間なら、待ちましょうか」ということになりそうです。
 では、こちらの言い方はどうでしょう?

「申し訳ございませんが、1時間ほどお待ちいただくことになります。いかがいたしましょうか?」

 負けず劣らず丁寧です。先ほどの応対例との違い、どこにあるかお気づきですね。後半部分が微妙に異なっています。

1.「~いかがなさいますか?」
2.「いかがいたしましょうか?」

 少し理屈っぽい話になってしまうのですが、「1」は「あなた」が主語。元の形は「あなた(=お客様)は、いかがなさいますか?」。そこから主語が省かれた形です。
いっぽう「2」は「私」が主語。同じく元の形は「私(=店員)は、いかがいたしましょうか?」。同じように主語は省かれています。

より柔らかい印象を相手に届ける方法

主語が「あなた」なのか「私」なのか――。言い換えれば、相手に何かを“してもらう”のか、あるいは自ら何かを“する”のか、ですね。それぞれ、
「あなたは、どうしますか?」
「私は、どうしましょうか?」
――の丁寧な表現、というわけです。

 このようなケースでは、「あなたは、どうしますか?」と、問いかけるよりも、「私は、どうしましょうか?」という表現のほうが、相手にとっては“柔らかい印象”に聞こえます。
 特に電話やメールなどフェース to フェース以外のやり取りの場合は、「私」を主語にした「いかがいたしましょうか?」~すなわち「私は、あなたのために、何をしたらよろしいのですか?」という言い方のほうが、より丁寧で謙虚な表現として相手に届くのです。

どちらかと言えば“奥ゆかしい”日本人としては、
「あなたは、どうしますか?」→「私は、こうします」という言い方よりも、
「私は、どうしましょうか?」→「では、○○してくださいますか?」という言い方のほうが、口からスッと出やすいのです。
 あまり心のこもっていない言い方で「いかがなさいます?」と聞かれると、つい「私は○○しますから結構です」と続けてしまいたくなりそうですね。

こうした「わずかな違い」に気を配れるか否か――。日本語の難しいところでもあるのですが、同時に「素晴らしいところ」といえると、私は思っています。

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