役所の窓口に「ありがとう」は必要か? – “気働き”コミュニケーション術⑨

2016-06-01
社長のコラム

人は誰でも「プラスのふれ合い」を求めている

「ただいま男性(女性)スタッフが清掃中です」
駅など公共施設のトイレの前にこんな案内が出るようになりました。以前は「清掃中イコール使用不可」だったのですが、部分的に使えるようになって助かることもありますね。
この案内板が目に止まると、「使わせていただいてよろしいですか?」と必ず声をかけます。そして使い終わったあとには、「きれいにしていただいた直後で、気持ち良かったです」とお礼を言って立ち去るようにしています。
誰かの“ためにする”わけではないのですが、「私はあなたのサービスを知っています。そして感謝しています」という意思表示――。声をかけた自分も気持ちよくなれるのです。これも「プラスのふれ合い」ですね! お掃除をされている方も「よし、もっときれいに掃除しよう」と感じてくださるかもしれません。

たとえば外食チェーン店であっても、「いらっしゃいませ」だけではなく、しっかりこちらを向いて挨拶してくれると、同じメニューを頼んでも“ちょっとおいしく”感じます。これも、「プラスのふれ合い」効果ですね。思わず「デザートも頼みましょうか」という気分になるものです。
逆に「この店は挨拶もできない」「食器の下げ方がガチャガチャとうるさい」などと感じてしまうと、自然に足が遠のいてしまうでしょう。

人間は幸せになるためにオギャーと生まれ、生きていると私は思っています。不幸になりたい人など、いないのではないでしょうか。だとすると、常にお互いが幸せになれるような影響を与え合うことを皆が望んでいるはず。それが「プラスのふれ合い」だと思うのです。
私たちはこの「プラスのふれ合い」を実現するために、この本でお伝えしてきた気配り、気働き、そしてコミュニケーションの具体的な方法を駆使して、さまざまな相手と向き合っていくのです。

ホテルのサービスと役所のサービスは同じ!?

 自治体の窓口も同じで、訪ねてくる住民は「プラスのふれ合い」を求めています。この点で役所のサービスとホテルのサービスは本質的に変わらないものと思っています。
たとえば役所の窓口で、
「すみませ~ん」
「はい! ただいま」
 というやり取りがあるだけで、「あっ私のこと、分かってくれた!」と、気持ちが安らぎますね。住民の皆さんは、その瞬間の「プラスのふれ合い」を求めているのです。

こうした自治体の窓口業務については、近年、以前とは比較にならないくらい意識が変わってきているところがあります。そのいっぽうで、まだまだこれからという面も残ります。たとえば、
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
実はこのふたつ、私は「ぜひ使ってください!」と、各所で声を大にして言っているのですが、いまだ多くの自治体ではなかなか使われない言葉です。理由を聞くと、たいていの場合「うちは商売ではない」という答えが返ってきます。
 しかし、本来「ありがとうございます」は、暑い中、寒い中、わざわざ窓口まで来てくださったことに対する感謝の言葉。モノを買ってもらって利益が出たから言う、という種類の言葉ではないはずです。

いっぽう「役所のサービスとホテルとでは違う」部分も存在します。時には「No」と言わなければならないのが役所のサービス。たとえば「税金、まけて」「保育料や給食費をまけて」などには、次のように「No」を伝える必要があります。

「お気持ちは、よく分かります。私も金額面の配慮が可能であればと思うのですが、申し訳ございません。こればかりは、お客様のご希望を叶えることはできかねるのです」

民間企業であれば、ケースによっては「あなただけ、特別に」という対処の可能性もあるでしょう。しかし役所の場合、それはあり得ません。すべてが法律、条令、規則によって規定されているからです。そこで、いかに「No」を伝えるかがポイントとなるのです。
「No」を伝える際、「法律、条令はこうなっていますから」という説明はマイナスに作用します。「いざとなると、役所は法律を振りかざす」と、住民の反発を招くことにつながるからです。
 事が起きてからの「治療薬」として使うのではなく、事前の説明会などで「予防薬」として使う――。「法律、条令、規則」を使って説明する機会がある方は、ぜひ覚えておいてください。

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