“マジックフレーズ”の達人になる “気働き”コミュニケーション術⑰

肯定的な表現が放つコミュニケーションのパワー

 あなたが「ピンク色の表紙のノート」を探して、文具店を訪ねたとしましょう。しばらく売り場を歩いてみても、お目当ての色は見当たりません。
「すみません。ピンクのノートがほしいのですが……」
 さて、店員さんの応対として好ましいのはどちらでしょうか?

1.「ピンク色は、ありません」
2.「大変に申し訳ございませんが、ただいま在庫は○○色だけとなっております」

 これは説明の必要もなさそうですね。「1」では、あなたは「もう二度とこの店には来ない」と“激怒”することでしょう。いっぽう「2」のような応対ならば、たとえ目的の商品が手に入らなくても、悪い印象は残りません。
 ポイントは、次の2つです。
・「申し訳ございませんが」という“クッション言葉”の使用。
 クッション言葉とは、ほかに「あいにく~」「恐縮ですが~」「恐れ入りますが~」など。強い内容を伝える際、相手に与える印象(衝撃)を和らげるフレーズです。
・「ピンクはない」(否定)から「○○色ならある」(肯定)への置き換え。
 これは、「できない」(否定)ことを相手に伝えるときに「できかねます」「いたしかねます」と、肯定的な表現に置き換えていくのと同じ理屈ですね。相手の方に好意的に受け取ってもらえる確率が高くなります。

 実際にはさらに、「明日でしたらピンクが入荷いたしますので、すぐにご連絡させていただきますが、よろしいでしょうか?」などと、「提案」をしていきます。

「すみません。ピンクのノートがほしいのですが……」
「大変に申し訳ございませんが、ただいま在庫は○○色だけとなっております。明日でしたらピンクが入荷いたしますので、すぐにご連絡させていただきますが、よろしいでしょうか?」
 ――いかがでしょう。これならば、たとえお目当ての商品が在庫切れであっても、「いいお店だな」「仕事のできる人だな」という印象が残りますね。

命令ではなく提案を

 文房具店でのやり取りを例にご覧いただいたのは、クッション言葉に続いて「否定」を「肯定」に置き換えるパターンでした。同様に「命令」を「依頼」に置き換える言い方をご紹介していきましょう。
 たとえば、飲食が禁止されているはずの公共施設内で、お菓子や飲み物を広げている人を見かけたとします。あなたなら、どのように声をかけますか?

1.「ここは飲食禁止です。ルールを守ってください」
2.「恐れ入りますが、ここは飲食禁止です。ルールを守っていただけますでしょうか」

 決して間違ったことは言っていないのですが、「1」はかなりキツイ印象ですね。場合によっては、相手の方とのトラブルに発展するかもしれません。こういうときのためにクッション言葉があるのですが、残念ながら使われていませんね。
「2」には「恐れ入りますが」とクッション言葉で印象を和らげる配慮があります。続いて、「守ってください」という命令ではなく、「守っていただけますでしょうか」という依頼。この伝え方ができれば、相手も落ち着いて話を聞いてくれそうですね。

 クッション言葉→「否定→肯定に置き換え」(→提案)
 クッション言葉→「命令→依頼に置き換え」(→提案)

 こうした一連の言葉の流れを「マジックフレーズ」と呼びます。特に大切なお客様、初対面の相手に対しては、このマジックフレーズを活用して、スムーズなコミュニケーションをとっていきましょう。