これであなたは“あがらない”でスピーチできる “気働き”コミュニケーション術22

失敗の原因、9割は準備不足

 会議での発表やプレゼンテーション、あるいはお客様への商品説明。人事セクションなら会社説明会であったり、行政の職員ならば住民への説明であったり――。
 あなたが司会者やガイドさんのような専門職ではなくても、ビジネスパーソンであれば「人前で話す」機会は少なからず巡ってきます。社会人として、やはり一定の「スピーチ力」は必要ですね。
 スピーチ力を上げる一番確実な方法は、優れたテクニックやコツを身につけるよりも、ズバリ「よい準備」をすること。
 私どもアビットの専任講師の一人は、こんな準備をして本番に臨むといいます。
「登壇の当日は出発の3時間前に起床。投影内容(スライド)を見ながら、その日に話すことを頭の中で一度リハーサルします。そして『完璧!』と声に出してから現地に向かいます」
 もちろん、当日を迎えるまでにも十分な準備があってのこと。加えてギリギリまで本番をイメージした仕上げをしておくと、多少の失敗があっても「やれることは、すべてやった」という自信がカバーしてくれるのだそうです。

 皆さんには、ここまで徹底的な準備をする時間はないかもしれません。しかし、話す内容を頭の中で組み立てるだけではなく、ポイントを箇条書きにする。そして環境が許せば、実際に声を出して練習しておく。こうしたことが、とても大切です。
 できれば鏡を見ながら表情(=自然な笑顔)を意識し、立ち姿勢や視線の配り方まで確認しておけば、より一層の自信を持って本番に臨めるでしょう。

本番前に誰でもできるリラックス方法

人前で話す、スピーチするといえば、必ず出てくるのが「あがる」という“お悩み”ですね。「あがってはいけない、あがらないように」と思えば思うほど、頭が真っ白という経験は、多くの人がお持ちでしょう。
 あがってしまうのは、そのことに対して一生懸命に取り組んでいる証拠――。と、私は考えています。ですから決して悪いことではありませんし、生身の人間としてのごく普通の反応。30年近くも「話す」「教える」を仕事にしている私であっても、「ここが勝負!」と力が入るような場面では、普段以上に緊張します。それでも「あがっている」ように見えないのは、それなりに場数を踏んできたことに対する神様の“ご褒美”かもしれません。

 では、実際に「あがる」不安を最小限にするための、いくつかの方法をご紹介していきましょう。
 まず、これは先ほどの繰り返しになりますが、自分で納得のいくまでしっかり準備をして臨むこと。これによって、仮に「あがった」としても口が勝手に動いてくれます。周りからは、まったく「あがっていない」ようにも見えるのですね。やはり、「準備」に勝るスピーチ術、あがり解消法はないのです。
 加えて、本番前に“場になじむ”ことも効果的です。商品説明会、あるいは住民説明会など、準備のために早めに会場へ入れるようなときには、自分の立つ位置に実際に立ってみるなどして、本番をイメージしておきましょう。
 さらに可能であれば(実はこれがオススメです)、早めに会場に来られたお客様に丁寧な挨拶をし、積極的に話しかけてみてください。
「本日は、ありがとうございます。遠くからおいでいただいたのですか?」
「お手洗いはこの先、突き当たりにございます」
「エアコンの効きすぎなど、どうぞ、おっしゃってください!」
 積極的に体を動かし、声を出し、聞き手との間に事前に良好な関係を築いておくことができれば、本番が始まってもさほど緊張せずに済むことが多いのです。控室で声も出さず、緊張したまま開始時刻を迎え、いきなりマイクの前に立つ状況と比べると、リラックス効果は絶大です。

 いよいよ話し始めたら、積極的にうなずいてくれる人を見つけるとよいでしょう。緊張する最初のうちは、その人たちに向かって話すようにします。「聞いてくれている」という安心感が、徐々に緊張をほぐしてくれるはず。始まる前に会話を交わしたお客様が近くに座ってくださると、それだけで心強く感じます。

 こうして徐々に経験を積んでいけば、いつしか「あがる」ことが怖くなくなります。そのためにも、話す機会があれば積極的にチャレンジし、どんどん場数を踏んでいきましょう。