日常業務での“気働き”ポイント(1) - ビジネスマナーの新常識③

エントランス、食堂でも「公共の場」の意識を

ある朝、都内の某企業のロビーで、私はこんな光景を見て驚きました。
「おはようございます」と、あいさつする警備員さんに対して、社員の誰一人として(少なくとも私が見ている間は)あいさつを返さないのです。
そこは大手のメディア企業。とても優秀な方が多いと見えて、「あなたは私にあいさつをして当たり前」「私はあなたにあいさつをしなくて当たり前」という意識、企業文化が凝り固まってしまっているのでしょう。
先ほど「一歩家を出たら、常に見られていることを意識する」というお話をしましたが、ビルのロビーは「公共の場」。あいさつをされない社員の方にも、ぜひ「見られている」という意識を持ってほしいと感じたのです。

あなたはいかがでしょうか? 一日の始まりは元気なあいさつから――。社会人として「まさに最初に」学ぶ(確認する)ことですね。ご紹介したエピソードは、ぜひ貴重な教訓として活かしてください。

ちなみにこの企業の食堂にお邪魔したこともあるのですが、ここでも目を疑うような出来事に遭遇しました。食べ終わった後、自分の座ったいすをそのまま(引いたまま)にして立ち去る人が圧倒的に多数なのです。お忙しい仕事なのでしょうけれど、せめて自分が座ったいすの面倒をみる(テーブルに戻す)くらいの時間はあると思うのですが……。
私は(余計なおせっかいと知りつつ)周囲の引いたままのいすをテーブルに戻しながら、ここがお客様も利用する「公共の場所」であることが、まったく理解されていない現象なのだ――と、これも教訓として胸に刻んだのです。

給湯室、化粧室、ロッカーは「こんなところが見られている!」

 ビジネスパーソンが登場するテレビドラマでは、女子社員同士が上司の悪口を言ったり、同僚のウワサ話に興じたりする場所として“必ず”描かれるのが、給湯室や化粧室、ロッカールームですね。確かに男性上司の目の届かない安全地帯のようでもあり、リラックス、息抜き効果は大きいと思います。
 ただし、ここでも注意すべき点は「公共の場」であり「常に見られている」という意識を持つことです。

都内の某企業へお邪魔したときのこと。打ち合わせが長引いたこともあって、化粧室をお借りしました。その際に目に飛び込んできた光景には心底驚きました。生理用品が巾着袋に入れるでもなく、そのまま棚に置いてあるのです。しかも、中にはパッケージが開けてあって、中身がむき出しのものも……。コンビニで生理用品を買うときに、わざわざ紙袋に入れてくれるのはなぜなのか、それすら理解できていない社員がいるのです。私はこの会社の社員教育の不徹底ぶりに、(他人事ながら)落胆したのを覚えています。
本来、公共の場である化粧室に私物を置くべきではありません。百歩譲って「置いてよし」だったとしても、生理用品を直接人の目に触れるように置くことは、その会社の信頼性そのものに影響を及ぼすと考えるべきでしょう。
置いた本人の常識の欠如もさることながら、それが放置されているところに「公共の場~来客も利用する」という意識のなさが表れているのです。

 別の日に訪ねた某役所の化粧室では、生理用品の放置がなく安心したのもつかの間、何人かの職員が歯磨きをしながらおしゃべりに夢中になっているのを目撃しました。入口には「市民と職員の共用」であることが書かれているのですから、「市民から見てどう感じるか?」という想像力の不足を指摘されても仕方がないと思います。

 給湯室、化粧室、ロッカーは区切られていても、話し声が外に漏れて聞こえることは結構あるようです。近くの廊下をいつ誰が通るのかは分かりません。繰り返しになりますが、「公の場」であることをくれぐれもお忘れなく!