接客応対で問われる、あなたの人間性 - ビジネスマナーの新常識⑤

お茶出し、コピー取りは雑用ですか?

「雑用という仕事はない」。私は常々こう考えています。お客様にお茶を入れて差し上げるのも立派な仕事。一枚のコピーを取るのも立派な仕事。こうした大切な仕事を「雑用を押し付けられた」などと言って“低く”見ているようでは、とてもその先の仕事を任せられないとさえ思います。
 お客様にお出しする一杯のお茶。外の気温、室内の温度を細やかに感じ取り、煎茶にするか冷茶にするか、氷はいくつ浮かべるか――。それは洗練された振る舞いとともに、その会社の品性を映し出すと言っても決して過言ではありません。
原紙の状態や使われる場面を考えながら、しっかりとコピーを取る。たとえば「原紙の文字が薄い」と判断すれば、自動(オート)に頼らず自分で濃度を調整してみる。あるいは全体に文字が小さくかつサイズに若干の余裕があれば、ほんの2~3パーセントでも拡大コピーを取ってみる――。
お茶にしても、コピーにしても、それぞれ創意工夫の余地がたっぷりある、とてもクリエイティブな仕事なのです。

 この項では、お客様をお迎えするマナーのひとつとして、お茶、コピーについて、少々ユニークな視点、アイデアをご紹介していきましょう。

おいしい「お茶」を入れる方法

 こんな経験はありませんか? お客様が帰られた後、会議室の湯呑みを片付けながら、「あっ、お茶を入れ替えなかった」と気づき後悔する。長時間の打ち合わせであれば、せっかくの一杯目も台無しですね。
お茶を入れ替えるタイミングは、実はなかなか難しいものです。すべてその場の状況次第ですから、正解はどこにもありません。
とはいえ、相手がちょうど「飲みたいな」と思った瞬間にサッと入れることができれば、会社の(もちろん、あなたの)評価もグッと上がりますし、行き詰った雰囲気を変えることによって、商談を成功に導くこともできるのです。
実際には、次のような“きっかけ”をつかんで動いてみてはいかがでしょう。
・商談、議論などが続いたが、ひと息ついた様子
・席を外す人がいる
・咳払い、沈黙、静寂など話が停滞している、行き詰っている
 もちろん会議・応接スペースまでの距離などさまざまな条件にもよりますが、こうしたタイミングをとらえるには、まずは「気づこう」とする姿勢を持つことが必要です。小さな物音や雰囲気の変化を察知するセンサーを日頃から磨いておけば、仮に自分のデスクワークをしていたとしても気づくことは可能です!
 会議・応接スペースがフロアの外にあるなどの場合、今度は時計との相談ですね。打ち合わせ、商談のちょうど“半ば”の頃合いを見計らい、行動を起こしてみてください。
 最初が日本茶であれば、次はコーヒーに。さらに長引くようならチョコレートなど甘味のあるお菓子も喜ばれるでしょう。

 最後に、とっておきの“スゴ技”を伝授しましょう。あなたは「おいしいお茶」の入れ方をご存じですか? お湯の温度、蒸らす時間、湯呑みを温めておくことなども、もちろん大切です。しかし、一番大切なのは、心からお客様をお迎えする気持ち、「ご来社ありがとうございます!」という気持ちを込めて入れることです。
あなたが彼氏(大切な人)のために初めて料理を作ったときの“あの気持ち”と、実は同じなのです。

会議資料の“隠し味”的な気配りとは?

これは、かつて議員秘書をされていた方から伺ったものです。気配り、気働きの中でも“隠し味”的なアイデア。職場環境の変化によって、すべての皆さんに試していただけないかもしれませんが、ご存じでない方は心の片隅にぜひ留めておいてください。

あなたは会議資料の作成などで、束ねた用紙の“裏側”にあるホチキスの針(先端)が気になったことはありませんか? ソーターの付いたコピー機でホチキス留め機能を使った場合はきれいに処理されるようですが、少部数を手で留めた際には、どうしても針の先端が気になるものです。
まずは、大きく突出している針を、手近にある硬いものを使って押し込むなど、できるだけ“平ら”に近づけます(さほど飛び出ていない場合は、この工程は省きます)。次に2~3センチメートルほどに切った「セロハンテープ」をその上に貼っていくのです。
最近では「針なしホチキス」の出現、そして「リサイクル」のしやすさへの配慮などから、このアイデアも“出番”が減っているかもしれません。しかし、「ここぞ!」というときのために、覚えておいてはいかがでしょう。
お客様が自社に帰られた後、資料の裏側に隠されたあなたの“気働き”に気づく……。想像すると、なかなか痛快かもしれませんね。