【コラム】箱根駅伝のチームワークと感動を職場に!

約6000万人が視聴し、NHK紅白歌合戦を超えた箱根駅伝
今年も、感動のドラマをたくさん与えてくれました。
テレビ離れが加速する中、毎年1月2日、3日の箱根駅伝だけは観るという人は私を含め多いようです。ましてや、自分の母校や知っている選手などが出場しているとなると、観ていても緊張で手に汗を握りテレビにかじりついてしまいます。
長いテレビ中継でも、その間は妻が私に用事を頼むことはなく、正月のこの時間は私にとって至福の時間になっています。
感動は放映中だけでなく、後日の新聞報道されるいろいろなドラマを読んでも生まれてきました。往路結果が目標より大きく下回り、逆境のチームを押し上げたあるチームの強い絆が取り上げられた記事に感動したので、その一部を紹介します。
――多くの4年生がエントリーされた中、ケガでただ一人、出場できなかった選手がいた。それまで積み重ねてきた努力の意味を自身に問い、もがく時間が続き、大会当日も心が晴れずにいた。せめて同じ4年生の力になればと、同期の4年生が走る区間の給水係を志願。
走ってきた4年生の選手にボトルを渡しながら「4年間ありがとう」と伝えると、「お前のために走っているんだ」との言葉が。その瞬間、心を覆っていた霧が晴れ、苦楽をともにした同期生へ感謝が込み上げてきた。その選手も数週間前にすねを負傷し出場が危ぶまれていた中で、追い上げへの必死の走りをしていたのだ。
給水係をし、最後の箱根を走れなかった悔しさは残る。それでも彼は「目標を目指して仲間と一緒に頑張ることができた。最高の宝になりました」と。――

駅伝はチームワークが重視されるスポーツとして、「団結のたすきリレー」とか「心のきずな」と呼ばれることがよくあります。
一人の選手のブレーキが、チームの成績を天と地の違いを分けてしまうことも起こる、非常に過酷な競技の一つでしょう。
夢の舞台に立つために青春の全てを注ぎ、4年間で築かれたマネージャーやチームサポートを含めたチーメンバーの友情は、何物にも代えがたい財産となり、彼らの人生を豊かなものにしていくに違いないと思います。
私たちの職場においても、そのような心のつながりを生み出すことができるならば、なんと素晴らしい職場環境になることでしょうか。
「チームワークを発揮できるのは、全動物の中で人間だけ」
とは、霊長類の第一人者・山極 壽一氏(やまぎわ じゅいち・元京都大学総長)の言葉です。
また次のようにも述べています。
「オランウータン、ゴリラ、チンパンジーという人間に近い類人猿は、ほとんど熱帯雨林を離れたことがありません。人間は、なぜか熱帯雨林を出ることを選択したために、弱さを使いながら新たな強みを創り出さなくてはいけなかった。
そのとき人間は、牙をつくったり身体を大きくしたりして身体に武器をつくるのではなく、共感力を高めて協力しあうことを始めたのです。それが、今我々が言うところのチームワークにつながっているのだと思います。
共感力とはおたがいの立場に立ってものを考えられる力です。
おたがいの立場に立てるからこそ、たとえばぶどうを採りに行くときに、自分には仲間が何人いて、いくつ持って帰ってほしいと期待されているかを想像できるようになる。共感力が想像力を生み、チームワークを可能にしたと言えるかもしれません。」
私たちの職場でも、チームワークの原点を考えさせられるとても大切な話だと思います。
執筆者プロフィール

佐伯 邦章 (さえき くにあき)
≪経 歴≫
広島県で35年間、県立高等学校及び公立中学校へ勤務。
教師のための英語教育セミナーを複数開催。
高等学校教頭、中学校長を務める。「中学生のための7つの習慣教育」等の
先進的取組みに対し、広島県教育委員会から教育奨励賞を受賞。
退職後、地球一周の旅へ。
船上で生き方セミナーをシリーズ開催。
定年後の起業を目指し、数々の創業セミナーを受講。
セミナーでつながったシニアの仲間と、地域活性化を目的としたNPO
プラチナ創業塾を立ち上げる。理事長として、地域サロン、健康サロン、
カフェ、パソコン教室、婚活支援事業など4年間運営する。
2019年より、夫婦で東京都に転居。