あなたの話をどう受け止めるかは、聞き手次第 - “気働き”コミュニケーション術③

「午後一」という曖昧な表現に潜む落とし穴

「明日の打ち合わせは、午後一のスタートでお願いします」
「承知しました。では、午後一に伺います!」
 あなたの周囲で、こんな会話が飛び交ってはいないでしょうか。ごくごく普通のやり取りのようにも思えますが、実は意外な落とし穴が待ち受けています。
 もう、お分かりでしょう。ポイントは「午後一」の定義ですね。「13時」ととらえる人もいれば「13時30分」という人もいます。
次のような会話も同様です。
「当日着ていくシャツの色は、白でOKでしょうか?」
「はい。白でお願いします」
 この場合は「白」が意味する範囲が問題になりますね。「真っ白だけ」という人もいれば、「ストライプが入っていても、遠目に白く見えればOK」と判断する人もいるでしょう。

 あなたが誰かと会話をする場合、あなたの話をどう受け止めるかは、すべて聞き手に決める権利があります(=聞き手の決定権)。

あなたが「13時」のつもりで「午後一」と言ったとしても、相手にとっての「午後一」が「13時30分」であれば、「午後一イコール13時30分」と受け取られてしまうのです。
このままでは、あなたが30分も“待ちぼうけ”を食うことになってしまいます!

では“待ちぼうけ”を避けるには、どうすればいいのでしょうか。
これは、さほど難しくないですね。「午後一」という曖昧な表現ではなく、次のように伝えればよいのです。
「明日の打ち合わせは、午後1時のスタートでお願いします」

相手の“モノサシ”を早く見つける

先ほど「すべて聞き手に決める権利がある」と書きました。では、聞き手が話を受け止めるときの基準、根拠はどこにあるのでしょう。それは、一人ひとりに備わっている価値観という“モノサシ”です。
JIS規格の定規であれば、どの定規でも1センチは1センチで同じです。しかし、価値観というモノサシの1センチはその人にとっての1センチ。先ほどの「午後一」の解釈のように、それぞれ違うのです。
 モノサシが一人ひとり違うのは、なぜなのでしょう。それは私たちが皆違うところで生まれ育ち、学歴、職歴、家族構成をはじめ過去、現在、未来のすべてが違うからです。
私たちが話を聞くときには、こうしてできた自分の価値観=モノサシを基準に、相手の話を“自分の都合で解釈しながら”聞いているのです。
より良いコミュニケーションを取るためには、相手のモノサシの1センチがどのくらいかを察知して、それに話を合わせていくことが大切ですね。逆にそれをしなれば、話がかみ合っていかなくなります。対面であれ電話であれ、相手のモノサシを早く見つけることが重要です。

 相手はどんな方でしょう――。結果がすべてというタイプかプロセスを重視するタイプか。ストレートな表現を好むのか否か。話題についての専門知識はどの程度か。トラブルにはどんな反応を示すのか。禁句は何か。逆に言ってほしい言葉は何か……。このような情報を早めにつかむことが、その人と会話をするうえで、貴重な手がかりになるのです。
 こうした情報を得て、スムーズなコミュニケーションを実現するためには、細やかな人間観察が必要です。たとえばあなたの上司であれば、日々のやり取りや内外に対する言動などを、さりげなく注視します。特に「何を喜び、何を嫌うのか」については、誰よりも詳しくなることを“密かに”目指しましょう。

あなたが望むカタチで相手に受け取ってもらうには、まずは相手のモノサシ、価値観を把握し、それに合わせて話を進めていくことが大切なのです。

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目次

  • 第1章 ”気働きコミュニケーション術・パート1”「あなたが笑顔なら、相手も笑顔になる」
  • 第2章 ”気働きコミュニケーション術・パート2”「キャピンアテンダントの接遇はなぜ気持ちがいいのか?」
  • 第3章 ”気働きコミュニケーション術・パート3”「相手から”YES”を引き出す方法」
  • 第4章 ”気働きコミュニケーション術≪電話編≫”
  • 第5章 ”気働きコミュニケーション術≪Eメール編≫”
  • 第6章 ビジネスマナーの新常識